2050年1万院開院の鍵を握る新卒採用、そこに向けた教育体制
SBCメディカルグループ(以下、SBC)では2050年に1万院開院(2021年11月時点で110院)を目指し、採用活動を活発に行っている。採用活動に伴い会社の規模が大きくなれば、それに合わせた教育体制が求められる。そこで、クリニックで働くスタッフを対象にした研修の企画、運営、管理を行うのが、内田氏がグループ長を務める総合教育部だ。SBCには現在、新卒向け研修、自身の等級に紐付けたキャリアアップ研修、役職者向けの研修など理念経営に基づく研修制度が10個以上用意されている。
「これまでSBCでは、どちらかといえば中途採用に力を入れていました。ですが、2050年に1万院(2021年現在、110院)のクリニックを充足させ、SBCのビジョンに共感しリードするフレッシュな人材を確保していくために、新卒採用が重要になってきます。そこで総合教育部としても新卒採用の教育体制を強化している段階です。」
現在、新卒入社向けの研修には、内定者研修、入職研修、業務研修、3ヶ月研修、6ヶ月研修がある。内定者研修は受講が必須ではないため内定者研修と入職研修に大きな違いはなく、SBCが最も大切とする「理念」について学んでいく内容となっている。
「入職研修は大きく2つの目的を持ってつくられています。1つ目は、社会人と学生の違いについて認識してもらい、共に働くスタッフ、お客様と信頼関係を築いていくうえで必要になる社会人としてのマナーとマインドを醸成すること。2つ目は、新卒だけではなく中途にも言えることですが、SBCで働くうえで必要となる知識や技術の土台をつくることです。」
座学の研修で知識をつけたうえで、受付カウンセラー、看護師それぞれに必要な技術を習得するための研修施設も用意されている。ここでは新卒入社だけではなく、中途入社のスタッフも実技の研修を行う。この施設は2021年4月に効率良く新人指導を行うために豊洲につくられた。これまで現場で指導していた時間が削減されクリニックの負担軽減にもつながっている。テストに合格しなければ現場に立つことはできず、個々の習得スピードにもよるが1ヶ月ほどで技術を習得していく。
「看護師はこの施設で脱毛の施術に関する技術を習得します。また、カウンセラーはカウンセリングのマインドや手法を学びます。ただカウンセリングの練習をするのではなく、クリニックでのお客様の対応を想定した動きを含めて習得していくんです。例えば、契約書を印刷したり、パソコンで予約を取ったりとカウンセリングを行う際に発生する業務全てを、実際にクリニックと同じツールを使いながら身につけていきます。」
知識と技術を研修で身につけたスタッフは1ヶ月後に配属先へ。そして、先輩の指導のもと、より実践的なスキルを身につけていくのだ。
SBCの未来に向けた課題を教育からクリアにする
新卒向けの研修だけではなく、プリセプター研修やキャリアステップ研修など、スタッフの成長に合わせた研修も整っている。全スタッフが対象となると、研修を受ける対象者の数は増え、集合研修を開催するにも時間やコストがかかってしまう。そのような課題を解決するため2020年3月から導入されたのが、オンライン教育制度だ。
「いつかは会社の規模感に合わせて導入しなくてはいけないねと話していたのですが、コロナウイルスをきっかけに導入をいち早く進めました。このオンライン教育制度は全スタッフ向けに提供している学習サービスです。人事制度の等級に紐づいているので、自身の等級に合わせ必要なコンテンツを学習していきます。自身の等級に合わせたコンテンツを習得し終わっていることが、次の等級へ上がる際の昇級条件となっているんです。」
内田氏はこのオンライン学習を営業時間中に取り組んでもらえるのが理想だと考える。とはいえ、忙しい業務のなか時間を見つけ学習を行わなくてはいけないとなると、どうしてもやっつけ状態になってしまうスタッフも多い。スタッフに前向きに学習してもらう難しさに直面している。
「SBCが目指す未来を実現するためには、一人ひとりの成長が大事になってくること、そのためには学習が必要不可欠であることを現場のスタッフにも理解してもらうことが大切です。また、1日8時間の就業時間のなかに学習時間を取り入れていく業務体制づくりを目指していきたいと考えています。」
現場で働くスタッフに自己成長の重要性を浸透させていくためには、役職者のリーダーシップ力も欠かせない。2050年に1万院開院の実現に向けて総合教育部が特に力を入れて取り組んでいるのが、役職者の教育だ。現在、現場では全体のスタッフ数に比べ、役職者が少ないことが課題となっている。そこに向けて教育の視点からアプローチを図る。
「今までは役職者に向けた研修は、新任副主任研修、主任研修だけでした。これからは、役職者になる手前のスタッフに向けた研修をつくる予定です。これまで役職者になってから教育をしてきましたが、今後は早期役職育成に力を入れていきます。」
総合教育部が最終的に目指すのは、入社したときから役職者を目指してもらえるような教育である。具体的なプランとしては、入社してから3年間で主任になる教育体制づくりを目指していく。
総合教育部としての成果を売上として可視化させていく
教育の成果は明確に見えにくい。最終的にはスタッフが成長することでお客様に満足していただけるサービスを提供し、会社の売上に貢献することが教育部としては本望だ。しかし、売上が上がったとしてもそれは一概に教育のおかげだと言い切れないところがある。
「教育の成果をどのようなポイントで見定めるかは難しいです。ですが、研修の受講率で考えると現在の受講率は100%ではないものの、オンライン教育制度では受講する母数は増えても受講率はキープできています。なので、現場のスタッフが教育に対して前向きに捉えてくれていること自体が、成果の一つなのかなと思いますね。」
教育の成果を明確にすることが難しいとなると、比例して総合教育部としての成果も見えづらい。そこで、総合教育部としてモチベーションを保つためにも内田氏は総合教育部を売上が立てられる部署にしていきたいと話す。
「今は経費を使って教育を提供している部署ですが、ゆくゆくは自分たちがつくりあげた研修や教育体制をコンテンツとして外部に販売したり、講師として登壇したり、ノウハウを社外へ打ち出すことで、売上につなげていきたいですね。そうすることで目に見えた成果が得られるので、総合教育部メンバーのモチベーションも保てるのではないかと考えています。」
SBCの凄まじい成長に合わせ教育体制をつくっていくには、共に取り組むメンバーのモチベーション維持はとても重要である。また、内田氏は部下の成長を目の当たりにする瞬間が喜びだと話す。だからこそ、メンバーと共に総合教育部としてSBCの成長に寄与していきたいと考えている。
「正直、教育でできることは限られていると思います。ただし、教育が及ぶ範囲は広い。教育というとどうしても知識、技術に目がいきがちですが、マインドの醸成も大事にしていきたいですね。マインドさえ整えば、成長意欲が高まりおのずと知識や技術を身につけようと前向きな姿勢がつくられていくと考えます。これから総合教育部ではSBCが目指す未来に向け、研修制度を今の倍にあたる20個に増やしていく計画が進行中です。会社の成長に必要な教育とは何なのかを常に考え続けていきたいです。」
SBCが目指す「世界一社会に貢献する伝説のメディカルグループになる」ことに向けて、内田氏はこれからも日々、総合教育部のメンバー全員で教育と向き合い奮闘し続けていく。