今回は六本木レディースクリニックの胚培養士、佐藤さんのSBCメディカルグループ(以下SBC)に入社された経緯や、仕事のやりがい、大切にしている想いについてお聞きしました。
“生命の奇跡”を感じられる胚培養士の仕事
まず初めに胚培養士とはどのようなお仕事なのでしょうか?
患者様からお預かりした精子と卵子を受精させて、その胚(はい)を移植するまでの間お世話するのがメインの仕事です。
不妊治療にはいくつか種類があります。卵子に精子をふりかけることで受精を促す、自然に近い方法の『体外受精』。精子や卵子に問題がある場合に、卵子に精子を直接注入する『顕微授精』などです。
いずれにせよとても繊細な仕事で、技術や体力が必要です。
不妊治療にもいくつか種類があるのですね。仕事をする上で心がけていることはありますか?
「ゴールを見据えること」を大切にしています。
私たちの仕事でいえば、患者様が妊娠されて、無事に出産を迎えられることです。そのためには何が胚にとって一番いいのか、常に追求するようにしています。
また、妊娠までにはいろいろなステップがありますから、焦らず一歩ずつクリアしていった先に患者様が妊娠に至った時は“生命の奇跡”を感じますね。妊娠までのステップに対して誠実に向き合うことが胚培養士にとって重要だと思います。
「大変だった」と振り返る過去を乗り越えて。次のステップに進むためにSBCへ
佐藤さんは今までどのようなクリニックで勤務されてきたのでしょうか?
最初は規模も小さく、こじんまりとしたクリニックに就職しました。そこでは、胚培養士としてのひと通りの経験を積むことができ、「胚培養士として独り立ちできるかな?」と思えるくらいには成長できたのですが、「違うクリニックでいろいろなやり方を学んだり経験を積んでみたい」と思うようになり、4年半で転職を決めました。
クリニックによって得られるスキルも変わってくるのですね。どのようなクリニックに転職されたのですか?
規模も大きく不妊治療のパイオニアともいうべきクリニックに転職しました。日本におけるART(生殖補助医療)を牽引してきた医師と培養士が在籍するクリニックで、「胚にとって1番の環境をつくる」という考えが徹底された環境でした。
前のクリニックとは違った新しいやり方や基礎を覚えていくことは大変でしたが、前のクリニックと比較すると患者様の数も多かったので、とにかく多くの経験を積むことができました。そのクリニックには10年間在籍しましたが、そこでの知識の蓄積は今でも財産になっています。
そこからSBCへの転職は何かきっかけがあったのでしょうか?
2社目の時に子どもが生まれたのですが、時短勤務できる条件が子どもが3歳になるまでだったんです。そのため仕事と家庭を両立するのが難しくなったことが、転職を考える直接的なきっかけでした。
また、どこかで「次のステップへ進んでみたい」とも思っていました。学んでいくばかりでなく、今の知識をどこか別の分野でアウトプットしたり、新しい知見を得る機会が欲しかったんです。
そのタイミングで知人からご紹介頂いたのが六本木レディースクリニックでした。子供の保育園との時間調整が可能だったことや、今までの経験を必要としてくれたこともあり入社を決めました。
入社直後に直面した苦労。周りを巻き込んで進めた業務改善
不妊治療のパイオニアともいうべきクリニックでご経験を積まれた佐藤さんから見た、六本木レディースクリニックの環境はいかがでしたか?
「クリニックによってやり方が異なるのは当然」と分かっていても、入社当時の六本木レディースクリニックのやり方はベストではないと感じる部分もあり、「この方がいいんじゃないか」と思い周りに提案したこともありました。
ですが、当時は「入社して間もない私が言っていいのかな……」と遠慮する気持ちもあって、改善の提案を伝えたあとも悶々としてしまったんです。
ちょうどその頃クリニックの拡張移転も重なり、バタバタして培養室の雰囲気が少しずつ悪くなり、私自身も気持ちが落ちこむ日々が続きました。
入社直後に改善の提案をされるなんて、流石ですね!具体的な改善の提案エピソードはありますか?
まず私が入社して気になったのが培養室の紙媒体の多さでした。1人の患者様の培養状況を記載する紙媒体が何ヵ所にも存在し、ID間違えや名前間違えを起こさないために確認作業が多く、業務効率が悪いと感じました。
そこでクリニックの拡張移転を機に電子媒体を導入し、今まで紙媒体で管理していた業務を簡略化しペーパレス化に向けて始動することができました。
また、瞬時に精子の数や精子濃度、運動率を算出することが出来る「精子運動解析システム」導入の提案も行いました。今までは目視カウントで精子を数えて、精子濃度や運動率を算出していました。目視カウントは培養士として必要な技術ではありますが、六本木レディースクリニックは拡張移転でより多くの採卵件数を対応する規模のクリニックになりました。
精子運動解析システムを導入し、人によるカウントの差が出ずに効率よく業務を進めることに繋がりました。
通常の培養士業務と並行して業務改善を行うのは大変だったのではないでしょうか?
培養室内だけでなく、院長や本部のスタッフも巻き込んで業務改善を進めました。SBCは院長の考えが柔軟なだけではなく、経営判断を行う本部機能が存在しています。本部スタッフは経営目線で客観的に意見を伝えてくれるので、改善スピードが早いと感じました。
また、入社したばかりの私の意見を真剣に聞いて下さったり、業務改善に繋がったことでクリニック内で院長賞を頂けたことも衝撃的でした。今では胚培養士一人ひとりが環境改善の意識を持って働いています。
患者様に寄り添い、気持ちを汲み取れること。胚培養士として大切にしている想い
小さいクリニックから、大規模なクリニックまで幅広く経験された佐藤さんですが、働く場としての六本木レディースクリニックの魅力はどこにありますか?
今までのクリニックでは「治療方針を一度決めたら変えない」ということも多かったのですが、六本木レディースクリニックの医師は患者様と密接にコミュニケーションを取りながら、どの治療方針がベストなのかを探って、常に患者様の期待に応えようとしています。
そして、そのために必要な「患者様と何でも話せる信頼関係」を意識的につくっているなと感じますね。受付カウンセラーや看護師など他の職種も含めて、すごく患者様想いのクリニックだなと感じています。
六本木レディースクリニックでは2022年に初めて胚培養士の新卒採用を行いました。佐藤さんは今後どのような方と一緒に働きたいですか?
働くスタッフや患者様としっかりコミュニケーションを取れる方と一緒に働きたいです。培養室は閉鎖的な環境なので、他のクリニックの胚培養士の中には人と話すことが苦手な方もけっこういます。ですが、仕事は一人でしているわけではありません。
また、患者様の中には、自分たちの治療に関わる人のことを知りたい方もいらっしゃいます。患者様のニーズに応えるためにもコミュニケーションが大切だと思います。そして、患者様や胚のことを一番に考えられる人と働きたいですね。患者様の気持ちに寄り添い、理解しようとするコミュニケーションを大切にできる方、患者様の想いを汲み取って形にできる胚培養士が増えていけばいいなと思っています。
特に新卒で入職された方など胚培養士としての経験が浅い方は患者様と接することで、気持ちを込めて仕事ができると思います。
「患者様や胚にとって一番の環境は何か」常に考え続けることが重要なのですね。佐藤さんの更なるご活躍を楽しみにしています!